なぜ今、バイオフィリックデザインか
2000年に、たくさんの夢と情熱を持って会社を立ち上げました。
息子がお世話になった病院の先生や看護師さん・スタッフのみなさんに恩返しがしたい。
「どうしたら、スタッフのみなさんがニコニコ笑顔になるのかなぁ?!」
「私が、人生をかけてできることは何だろう?」
21年間、変わることなく、考え続けています。
従来の病院のイメージ、汚い、暗い、冷たいといったリラックスとは程遠い空間を
スタッフのみなさんが気持ち良く仕事ができ、
患者さんに「この病院を選んで良かった」と思ってもらえる病院にしたい!
その思いを込めて、2008年に『インテリア医学』を出版しました。
安全で思いやりのある空間づくり・五感に訴えかける癒やしの空間づくりのポイントなど具体的に紹介しました。
前例のない書籍でしたので、書店に並んだ当日からたくさんの反響を頂きました!
そのことがきっかけで、日経PB・小学館などにも記事を掲載させて頂くこととなりました。
中でも、日本歯科新聞社発刊の歯科医院向け経営情報誌『アポロニア21』は
10年間毎月連載をさせて頂きました。
その間、企業のトップにインタビューする 大変ありがたい機会を得ました。
お話をお伺いした企業トップは120名余りです。
「先生やスタッフの方々が、快適で心も体も安らぐ医院を作るために!」
その方法や商材を尋ねました。
そして、記事にて紹介するだけではなく、実際私がお手伝いしている医院づくりの現場に取り入れ、リフォーム後の先生やスタッフの声も紹介しました。
この経験は、私のかけがえのない財産となっています。
これらの記事は、最初の4年間の連載を『インテリア医学の実践』、
10年間の連載を『快適医院をつくるインテリア医学』にて出版頂きました。
知識と経験を積み、今思うことは。
「先生やスタッフのみなさんが元気で笑顔であってほしい!」
働く先生やスタッフの皆さんは、日々多くのストレスにさらされています。
本当に感謝するばかりです。
そのストレスを、少しでも取りのぞきたい!
空間デザインで、できることは!
それは、「自然環境を取り込んだ空間デザインです。」
バイオフィリックデザインともいわれ、コロナ禍において自然環境の大切さが叫ばれるようになり、ようやく一般的に耳にするようになりました。
私は、この「バイオフィリックデザイン」こそが、病院環境にとても大切だと思っています。
「森の中にいるような 生命豊かな空間」が人を元気にしてくれます。
空間環境は、人に生理的・心理的側面からたくさんの影響を及ぼします。
「人の健康を空間環境からデザインする」
この20年間の経験を通して、この大切さを改めて感じています。
いつも私が考えている、
「どうしたら、スタッフのみなさんがニコニコ笑顔になるのかなぁ?!」
バイオフィリックデザインは、答えを知っています。
「先生やスタッフのみなさんが、ニコニコ笑顔でありますように!」
では、自然環境を取り入れるバイオフィリックデザインは、いったいどのようなものでしょか。
バイオフィリアとは人は元来、自然と触れ合いたい性質をDNAに持っているという説です(1984年エドワード・O・ウィルソン提唱)。
自然は人の心身に大きな影響を与え、健康や幸福感という利益をもたらすことが分かってきました。
この説に基づいたデザインのことをバイオフィリックデザインといい、癒しのデザインとして関心が高まっています。
オフィスや飲食店、一般住宅にも取り入れられ目にする機会はますます増えていますが、医療機関にこそ是非とも取り入れていただきたいと思っています。
体に不調があり心身ともに沈んだ状態で来院する患者さんや、その患者さんを受け止めるスタッフの皆さんを、無機質な冷たい空間に迎え入れていいのでしょうか。
自然の力を借りて工夫するバイオフィリックデザインで温かく心地よい空間にすることができるのです。
天気の良い日に森の中をのんびり散歩している…とイメージしてみてください。
木々の緑の濃淡、草花の色、風が吹くたびに木の葉がこすれ合う音、小鳥のさえずり、揺らめく木漏れ日、小川のきらめく流れ、落ち葉を踏む感触草木や動物が残した臭い。
森林浴は樹木が出すフィトンチッドという成分による癒し効果だけではなく、目や耳や肌を刺激し、五感それぞれに互いに影響を与えあうことで、より一層リラックスさせてくれるのです。
規則正しさと不規則さが調和した1/fゆらぎは自然界にあふれています。
その効果を人工的に再現させるためにバイオフィリックデザインがあります。
町のクリニックに森を再現させるという意味ではなく、植物やフェイクグリーン、アクアリウム、音響設備や照明などを効果的に組み合わせて、免疫力を上げるほどの快適な空間を作り上げることができるのです。
実際にバイオフィリックデザインを取り入れリニューアルした医院からは
「患者さんやスタッフに笑顔が増えた」
「スタッフの離職率がダウンした」
という満足のお声もいただいており、その効果は確かなようです。
人は自然と共に…。地球環境を守ることの大切さを改めて深く感じます。